名も無き引きこもりのこれまで⑤

母が認知症になったのは今から数年前の事です。
当時は僕、父、母、叔父(母の弟)、そして祖母(母の実母)の5人で暮らしていたのですが、その祖母がある時、階段から足を踏み外して骨折し入院する事になりました。
その為、今までは祖母がやってくれていた家事を今度は母が担う事となりました。
母は仕事を辞めて家事に専念する様になりましたが、正直母は家事が苦手な人だった為いつも辛そうにしていました。
また家族内で唯一の同性ということもあってか、母は祖母と仲が良かったですし祖母を頼りにしているんだなというのが僕にも見ていて伝わってきました。
父や叔父には仕事があるので、家にいる僕が掃除や洗濯など出来る限りの事は手伝ってはいましたが、いきなり自分の苦手な仕事を押し付けられた挙句、頼りにしていた人を失って母の心はだんだん弱っていったのだと思います。
それから暫くして、僕達は母の言動や行動が日に日におかしくなっていっている事に気付きました。

 

 

あんなに頭の良かった母が認知症……?僕にはとても信じられませんでした。
しかし以前の母からは考えられない言動や行動が、母は本当に認知症になってしまったんだという現実を容赦なく僕達に突き付けてきます。
以前にも書いたと思いますが、母は学力や学歴を重視する典型的な教育ママでした。
母本人も名門大学を卒業した頭の良い人ですし、そうなるのも無理はないと思いますが性格はどちらかというと大人しく内向的な人でした。
僕は圧倒的に母に似たのだと思います。
だから母は僕が引きこもりになった当初は何とか学校に行かせようと躍起になっていたのですが、僕が本気で悩んでいるのだと分かると、何か自分に通じるものを感じたのか徐々に理解してくれるようになりました。
たまに自分の望み通り名門大学に進学しなかった僕を嘆く事もあったのですが、それでも僕に理解を示してくれた分、父と比べて僕は母の事が大好きでした。
それだけに、母が認知症になってしまった事は本当に悲しかったです。

 

 

結局、家事及び母の介護は父が担当する事になりました。
毎日の食事の用意(と言っても殆どスーパーで買って来た物を並べてるだけでしたが)に加え、母の介護をする父は確かに大変そうでしたが、正直僕には同情する気持ちなどは微塵も湧きませんでした。
むしろ「ああ、天罰が下ったんだな」と、今まで信じた事もない神様に感謝したくらいです。
母の認知症の原因には、やはり引きこもりである僕の存在も大きく関わっていると思います。でもそれ以上に僕は父の影響の方が大きいんじゃないかと思うんですよ。
たまに父が「何でこんな事になったんだろう」的な愚痴をこぼしている場面を見た事があるのですが、「お前の身勝手で振り回したせいなんじゃないのか」と心の中でそう思わずにはいられませんでした。

 

 

そして現在……
祖母は亡くなり、母は介護施設へと入所する事になりました。
あれだけ頭の良かった母が認知症になり、見る影もなくなってしまう……そんな現実を目の当たりにして、僕はいよいよいい学校に入るだとか、働くという事に対して意味を見出せなくなってしまいました。
いくらたくさん勉強していい学校やいい会社に入ったところで、世の中には病気や事件や事故、災害……様々な危険で溢れています。
そしてそれらがいつ自分に牙を剥き、今まで積み上げた輝かしい功績を一瞬で奪ってしまうとも限らない。
そう思うと勉強だとか働くという事が、酷く無意味な事のように思えてきました。むしろ引きこもっている自分の方が正しいんじゃないかとすら思えたくらいです。
なので僕はこれからも、死ぬまで引きこもりを続けると思います。
この部屋で生き、この部屋で死ぬ……きっとそれが僕の運命なのでしょう。

 

 

長くなりましたがこれが僕の引きこもりになった経緯、及び今の僕の状況です。
ここまで書いてみて改めて思いましたが、やはり自分の気持ちを文字にするというのは難しいですね。
色々と言いたい事は頭の中に渦巻いているのですが、それをいざ文字に起こそうとするとなかなか上手くいかない……
そんなもどかしさと格闘しながらも、何とかここまで書くことが出来ました。

 

 

僕はリアルではもちろんネットでもコミュ障で、ネット上ですら人と関わる事を避けて来た人間でした。
しかし、そんな僕がこうしてブログを書き他者へ発信しようとしている……そんな事実に僕自身が一番驚いています。
少し前なら考えられない事ですが、誰でもいいから話を聞いてほしい、気持ちを吐き出したいと思うほどやはり精神的に参っていたのかなと思います。

 

 

もちろん、このブログの内容が皆さんから賛同を得られるとは全く思っていません。
自立に向けて頑張っている引きこもりの方もたくさんいらっしゃるでしょうし、「死ぬまで引きこもりを続ける」なんて書いている人間のブログなど賛否でいえば圧倒的に否の方が多いでしょう。
ですが自分の気持ちを綴るブログという場で、嘘の綺麗事を言っても仕方ありません。これが今の僕の、噓偽りのない本心です。
そしてその本心を吐き出した事で、僕の心は少しだけ軽くなる事が出来ました。

 

 

次はいつになるか分かりませんが、今回で語れなかった悩みだったり、話したい事はまだまだたくさんあるので次回はそれを中心に語ってみようかと思います。
もしよろしければ、読んでいただけると嬉しいです。