名も無き引きこもりのこれまで③

特に顕著だったのが体育の時間です。
僕は勉強には自信がありましたが運動に関しては全くダメで、体育の時間にはいつも醜態を晒していました。
しかしそんな僕を励ましてくれるような人は誰もおらず、先生からも生徒達からも滅茶苦茶バカにされました。
中にはいじめに近いような扱いを受けた事もあります。
「(学校は勉強する所なのに……どうして僕が自分より頭の悪い連中にバカにされないといけないんだろう)」。
体育の授業の度、僕はそんな事を考えていました。

 

 

また僕が先生から怒られる理由の一つとして、「ボーっとしている」というものがありました。
でも僕は授業中にボーっとした事なんて勿論ありません。恐らく先生は僕の授業以外での過ごし方を見てそう判断したのでしょう。
確かに僕はどちらかといえばマイペースでのんびりとした性格ですし、色々と空想したりするのも好きな子供でした。
でも、それってそんなに悪い事なんでしょうか?

 

 

例えば僕と同じ様に空想好きな子がいたとします。その子は将来、その想像力を活かして作家などの職業に就く事ができるかもしれません。
でもそれを端から見ていた他人が「あいつ何だかボーっとしてるな」と感じて的外れな注意をしました。するとどうなるでしょう?
恐らくその子は僕の、私のしている事は悪い事なんだと感じて想像する事を止めてしまうでしょう。
それはつまり、その子がベストセラー作家になれたかもしれない未来を潰す事に繋がります。
無知な人間のせいで未来の可能性が閉ざされる…そんな事は絶対にあってはならない事だと僕は思います。

 


話が少し逸れましたが、そんな毎日が続き、僕はいよいよ学校に行く事が出来なくなってしまいます。
不登校になった僕を両親はやはり怒り、初めの頃は何とか学校に行かせようと必死でした。
確かに学校に行けなくなった子供を学校に行かせようとするのは、親としては当然の反応でしょう。
しかしあの人達の対応は僕の将来を案じてというよりも、「よりによってウチの子供が不登校になるだなんて恥ずかしい」だとか、そんな自分達の都合をひしひしと感じました。
先生や同級生だけでなく両親のそんな姿を目の当たりにして、僕は小学生ながらどんどん人間というものが嫌いになっていきました。

 

 

ちなみに後になって分かった事ですが、僕達がこの糞田舎に引っ越す事になった理由は「マイホームが欲しかったから」らしいです。
それを知った僕は正直、怒りでどうにかなりそうでした。そんな身勝手で下らない理由の為にこんな所に連れて来られる羽目になったのかと。

 

 

(続く)